マイクロスコープは、私自身、総合病院口腔外科勤務中にも癌手術の再建(主に切除した舌の変わりにお腹の筋肉を代用)に形成外科と共に何度も携わり、馴染のある医療器具の一つでした。
歯科治療は繊細な治療ですから
マイクロスコープは必須だと思います。今までの歯科治療は大部分が肉眼に頼っていました。時には狭い口腔内を手探りや感だけで治療をおこなうこともあったと思います。そのため見えないところは見えるまで削ってしまうなど、健康な歯を削りすぎてしまったり、見えないために悪いところを取り残してしまうなど問題があるために、虫歯の再発が起こったり根の神経の痛みがでたりしました。
この歯科用マイクロスコープの登場により、高倍率(約20倍)で歯を見ながら治療が可能になり、顕微鏡治療をすることによって
健康な歯質は残しつつ悪い所だけを削る治療ができ、さらに拡大視しているので、きれいに治療部位を封鎖できるのです。
また、提携している歯科技工士もマイクロスコープにて技工物を製作しているそのため精度の高い修復治療が行えます。
近年は歯を最小限の侵襲で治療して、できるだけ削らずに歯を残すMI治療(「Minimal Intervention」の略で、最小の侵襲により最大の効果を得ようとの目的で考えられた人にやさしい治療法の事です。)が注目され主流になってきています。歯科用マイクロスコープを使った顕微鏡歯科治療も、そんな時代を象徴する最先端の歯科治療なのです。しかし、歯科用マイクロスコープは高価な機械であるため、日本の歯科医院においてあまり普及していないのが現状であります。(※2009年歯科医院普及率2.9%程度)
しかし当院では、精度の高い治療に重点を置き、より患者さまに満足頂ける歯科治療をおこないたいという想いから、いち早く導入し治療に役立てています。
マイクロスコープの最大の利点は、何と言っても「今まで見えなかったものが見えるようになる。そして今まで気が付かなかった事に気が付くようになる。よって診断能力が大幅に向上し、より精密な治療を行うことが出来る」といった事にあります。言葉にしてしまうと単純な事のように思えますが、その恩恵は大きく、各治療で多くの実績やメリットを示しています。ここでは、各治療におけるマイクロスコープの利点について解説いたします。
■ インレー・クラウンの除去
健康な歯は傷つけず銀歯のみを外すことができます。
■ 軟化象牙質の見分け
虫歯と健康な歯の境目がよくわかり、削りすぎ防止につながります。
■ 充填操作の確実性向上
つめ物操作時、段差なくきっちりつめられます。
■ 形成面のチェック
滑らかに歯を削ることができ、歯とかぶせ物の適合がよくなります。
■ 隙間のチェック
出来上がったかぶせ物のチェックが正確にできます。
■ セメント残渣のチェック
かぶせ物の接着剤の残りを確実に取り除きます。これを残しては人工的に作り出した歯石と同じです。
■ 根の治療の正確性向上
■ 副根管の発見
細い神経の出口も拡大することで細いと思えません。
■ コア除去に伴うリスクの軽減
差し歯の心棒を取る時も健康な歯は傷つけません。
■ 破折線の発見
肉眼では見えないひび割れも発見でき、大ごとになる前に治療できます。
■ リーマー破折片除去
折れてしまった治療器具も取り除けます。
■ 歯根端切除術
根の先端にできた膿の袋や汚れた根の先端を正確に除去できます。
■ インプラント周囲の歯肉形成
歯肉移植や形成外科などの繊細な治療には欠かせません。
髪の毛ほど細い糸でもスムーズに縫えます。
■ 歯肉縁下歯石の除去、根面性状の確認
歯肉の中まで歯石は付きます。顕微鏡を使うことで根を傷つけることなく掃除できます。
■ 歯周外科時のデブライドメント
歯石だけではなく汚れた歯肉も切除します。健康な歯肉との境がわかります。
■ 良質な移植片の採取
歯肉移植では血管が豊富な組織が必要です。よく見えるので質の良い移植片が取れます。